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『Endeavour/新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』、「Case 8 黒の絞殺魔」感想。-後編- [Roger Allam (TV)]

『Endeavour/新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』、「Case 8 黒の絞殺魔」感想の後編です。完全にネタバレしてますので、OKの方のみ(続きを読む)からお読みください。例によって時々シーンを飛ばしています。ご了承ください。ご意見・ご感想はコメント欄までよろしくお願いします。

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ちょっと飛びます

・バリッジズの従業員で在庫管理を担当していたノーマンがデパート内で殺される。ノーマンは1階で死んでいたが、犯行現場はストッキングの売り場だった。現場のすぐそばに絞殺事件で使われたのと同じストッキングが置かれていたため、犯人は同一犯ではと主張するモース。しかしブライトは別件であると判断、従業員への聞き込みをモースに命じる。このパターン、何かお約束になってきましたね。これでは犯人は同一犯だと読めてしまうではないですか(笑)。

・現場に落ちていたピアノの調律道具を手がかりに、調律師ピューを訪ねるモース。絞殺事件の被害者のうち3人はピアノを所有しており、ピューは全員のところへ調律に行っていたことが判明。部屋に同じアフターシェーブとフランスたばこの香りが残っていたので、同じ男が来ていたのではと証言する。うーむ、ちょっとこれは苦しい。目が不自由で鼻が敏感なのはわかりますが、耳も敏感なはずのピューが大事な仕事道具をフローリングの床に落としたことに気づかないのは不自然だし、被害者宅を3件も訪れていたというのも偶然にしては出来すぎのように思います。目の不自由なピアノの調律師の証言、アイデアは買うけれども、がしかし、という感じ。

・署でザーズデイとジェイクスに報告するモース。その後モースはデパートから届いた被害者が特注した品物のリストをチェックする。カフリンクにはアルファとオメガの刻印が入っていた。この場面でジェイクスが鉛筆を口にくわえてタイプを打っていますが、かーわーいー♪ちょっと惚れたかも。
 
・ガイ・フォークス・ナイトの夜に待ち合わせたモースとモニカ。派手に打ちあがる花火をバックにキスをする。何ともベタなシチュエーションだけど、モース、よかったねぇ。脚本のラッセル・ルイスがインタビューで「このシリーズは言うなれば若きエンデヴァー・モースの冒険物語なんだ」と語っていましたが、その言葉を裏付けるようなシーンです。

一方アームストロングの部屋で会話するサーズデイとアームストロング。サーズデイはずっととっておいたイタリア時代の写真を彼女に渡し、アームストロングはサーズデイに「抱き締めて 一度だけ 昔のように」と頼む。万感の思いを込めて抱き締めあう二人ですが、どうしてもキスをすることができず、お互い目をそらしてしまう。モース&モニカと比べると、なんと切ないこと。二人の演技が素晴らしいです。この後サーズデイは自宅に帰りますが、家に帰るとウィンがシチューを用意して待っていました。帰りが遅くなっても寝ないで待っているウィンを見つめたサーズデイ、一瞬揺れ動いた心がウィンに戻ってきたのがわかり、印象深いです。

ただサーズデイとアームストロングの話、これだけ重きを置いてしまうのはいかがなものでしょう。サーズデイの出番が多いのはファンとしてうれしいですが、今回のストーリーはもうこれだけで単独ドラマを作れるくらいの話ですよね。肝心の連続殺人の方には集中しにくくなってしまい、バランス的には感心しませんでした。ミステリーファンとしては評価は辛いです。

・ガイ・フォークス・ナイトのパトロールにあたっていたストレンジ、車から降りてきたグロリアとリスクが口論し、危険な状態になっているのを見かけてリスクを逮捕する。ストレンジの革ジャン、よく似合ってるではありませんか。ロッカーズ!

・リスクを尋問するサーズデイとジェイクス。リスクが取り出したタバコはフランス製のタバコ、ライターには「煙が目にしみる」という歌の一節が刻まれていた。ラジオドラマCabin Pressureをお聴きになっている方はお気づきでしょうが、ロジャー・アラム演じるダグラス副操縦士が「煙が目にしみる~♪」と節にのせてつぶやくシーンがあり、それを思い出すとつい笑ってしまいます。シリアスなシーンなのに。

・銀婚式のパーティでスピーチをするサーズデイ。そこへやってきてスピーチを終えたサーズデイを呼び出すモース。なんでこのタイミング...と思いつつ、事件だから仕方ありません。それにしても銀婚式、盛大ですね!ちょっとびっくりしました。

・サーズデイに推理を説明するモース。シアーズの家の壁に残されていた8は数字の8で、バリッジズの配達員ハギンズが荷物を配達する時、配達順がわかるようダンボールに白いチョークで書きこんでいたものだった(なーんだ、数字の8だったんかい!とかなり拍子抜け...)。リスクの手帳にハギンズの妻フローの名前があったため、ハギンズはリスクがつきあった女性の内、既婚者のみにターゲットを定めて殺人を重ねていたらしい。となると次なる犠牲者は、リスクがしつこくしていたグロリア...!

・グロリアの家を訪ねるハギンス。フローの好きだと言う曲をかけて、彼女にダンスをしようという。やばい、おじさん、目がイッちゃってる。。。(ここでかかる曲は感想の前編で書いたとおり、本来は「Sway」という曲なのですが、WOWOW放送版では静かなインストに差し替えられています)。曲が終わると彼女がリスクと不倫をしたと責め、黒のストッキングで首を締める。ギリギリのところでモースとサーズデイが部屋に駆けつけ、ハギンスを取り押さえる。はい、ここでハギンズを取り押さえるのはサーズデイです。ス・テ・キ。どこまでもサーズデイの見せ場を作ってくれてますねー。

・取調室。妻のフローを浮気の件で問い詰めた時に死なせてしまったと自供するハギンズ。しかしその後は身勝手な理屈で次々と女性たち、さらにノーマンまで殺していった。慄然とします。見た目は普通っぽいから、真実を知ると怖さが倍増しました。

・銀婚式のパーティに戻るモースとサーズデイ。そこへストレンジがバリッジズの女性従業員の件で、と言って顔を見せる。二人がむかったのは、遺書を残して自殺したアームストロングの自宅だった...。なんという結末。悲しい。サーズデイが聞いたのは翌日だったでしょうか。どこかで泣くことができたのかな...?

・裁判所に集まっているモース、サーズデイ、それにバリッジズの社長と従業員。裁判所はアームストロングは夫との死別から来る悲しみで自殺に至ったと結論付ける。モースはサーズデイに声をかけ、一度は断られるものの、結局パブに行くことになる。モースはサーズデイ宛のアームストロングの遺書をサーズデイに渡す。

パブで手紙を読んだ後、モースに「彼女が死んだのは悲しみではなく、戦争だ」と告げるサーズデイ。手紙をテーブルに残し去っていく。手紙を読むモース。そこにはアームストロングが戦争中に犯した過ちとサーズデイへの愛の言葉が書かれていた。サーズデイには罪はないけれど、サーズデイが彼女にしたこと-イタリアでの出来事を思い出し、分かち合うこと-は彼女を追い詰める遠因となってしまったのですよね。それが辛い。みんなかわいそうです。アームストロングが置き手紙を残してどこかに去っていく、という終わり方ではいけなかったのでしょうか。最後のシーンは、アームストロングの葬儀が終わり、帰途に着くサーズデイとウィンの姿をモースが見送るところで終わります。

余談ですが、ツイートを通じていただいた情報によると、ラストの辺りはITV放送時にはアルビノーニの「アダージョ」が流れていたそうですが、DVDでは差し替えられたようです。ロックやポップスが権利関係で差し替えられるのはわかりますが、なぜクラシックで?密かに謎が残るエピでした。モース、ついでに解決してくれない?

WOWOW 『新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』
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コメント 8

pane

私、もう最後は切なくて切なくて、涙でした・・。アームストロング女史、何も死ぬことないじゃないかー!!とは思うものの、それだけ苦しんできたんだなあと・・もう〜(泣泣泣)。ほんと、みんなかわいそうです。今回はモースはかわいそうじゃなかったけど(モニカ、いいなあー)。→ そうそう、しましまさん、お仲間発見、うれしいです!:-)

そして次がねー・・・。riekさんのレポート、楽しみにしてます!!
by pane (2015-03-01 04:14) 

カクテキ

このエピソード、デパートの人たちがいい感じでお気に入りでした(従業員のひとりが犯人でしたけど・笑)。
若社長の社員への心配り、友だち想いなオネエ店員さん、派手な感じの店員さんのノーマンへのやさしさ等、私もこのデパートで働きたいなと思いました。
サーズデイのエピソードは、確かに事件と同居させるには重すぎだったかもしれませんね。
by カクテキ (2015-03-01 09:53) 

hedgehog

riekさん

>肝心の連続殺人の方には集中しにくくなってしまい、バランス的には感心しませんでした。

おっしゃる通りです。この回は思い切って殺人事件の話は削除し、「Thursday in Love」のタイトル通り、サーズデイが現在の妻と昔の恋人との間で揺れる心の葛藤を描くことに終始して、あとはモースとモニカのかわいらしい恋模様を合間に挟み込む程度で抑えるべきでした(真顔)。

……でも、あの残酷なエンディングは私は嫌いじゃないです。アームストロングの遺書については、巧いことモースがこっそりゲットしてくれたから良かったようなものの、先に別の警官が見つけていたら面倒なことになっていたんじゃないかとは思いましたが。
by hedgehog (2015-03-01 21:20) 

しましま

おおう・・・盛り上がってますね!私も参入させてください!

ふむふむ、みなさん、サーズデイ警部の特番にしろと(そこまでは誰も言ってないか^^;)

私はこのシリーズは毎回頭が混乱しているので、特にこのエピが・・・とは思いませんでした。

モースがお父さんの死などからやっと心が回復して、新しい恋で上がって来たので、悲劇がお約束のENDEAVOURとしてはついに今まであまり見せられなかったサーズデイの感情で暗いトーンを挿しているのかと思いました。いつもは先輩がモースを心配してたけど、このエピでは逆転できるくらい新米も成長したから(笑)

ところで、大人の恋は素敵でした。キスできなくても感情の盛り上がりはモース&モニカ以上でした。やはり恋愛は障害がある方が燃えるって本当かも。銀婚式で奥さんとの歴史をああ盛大にみんなと共有させられるとサーズデイも辛かったろうなあ。その場にアームストロングがいなくてよかったなあ。ミセス・サーズデイは、夫の異変を感じていたかなあ。

そして殺人の動機は妻の不倫。サーズデイの感情にからめたな。
(でもモースシリーズって殺人の動機はほとんど恋愛のような。)

hedgehogさんのおっしゃるとおり、
サーズデイ宛の遺書はモース以外の人に発見されたらまずいことになってたかもしれませんよねえ。たしか暖炉の上にのせてありましたもんね。ストレンジとかにぶいから上司に渡しちゃうわ!

でもこのデパートのエピは華やかで大好きです。
女性が年代柄みんな派手だけど、遊び人ってわけじゃないんですよね。w
by しましま (2015-03-02 17:28) 

riek

*paneさん

本当に涙涙のエンディングでしたね。モースは愛した女性が二人も自殺することになり、見ていてあまりに辛かったので、サーズデイではやめてほしかったのが本音です。アームストロングが置き手紙を残して突然消えれば、それだけでサーズデイには十分ダメージだと思うのですが(もしくは文章で自殺を匂わせるけど、映像にはしないとか)。モースはラストつらくないですか?サーズデイの秘密も知ってしまうので(手紙読んじゃうから...)。

次は本当にやっててイヤになるエピでしたが、体裁が整ったら掲載予定です。しばしお待ちください。

by riek (2015-03-02 21:42) 

riek

*カクテキさん

デパートの人々、確かに基本いい人たちでしたね。店員さんが強引にナンパされそうになった時も、みんなで守ろうとしていたし。あの若社長の出来のよさには感心しました。先代がいいお手本だったのかなと推測します。

サーズデイのエピは、ロジャーさんだったから観たけれど、他の人だったら最後まで観られなかったかも。で、多分もっとメッタ切りにしています(苦笑)。アームストロングがもっと直接的に事件に関わっていたら、また別の感想を持ったかもしれませんが。

by riek (2015-03-02 21:55) 

riek

*hedgehogさん

ねー、これはやっぱり「恋するサーズデイ」ですよっ(何か歌のタイトルみたいですが)。事件が絡まないミニエピソードにしてくれればよかったのにw

あの最後については、上のコメントでも書いたように、個人的にはサーズデイでは遠慮して欲しかったです。おお、遺書についてはそこまで頭がまわりませんでした。さすがです。他の誰かが手にしていたらまずかったでしょうね。モース、グッジョブ!

by riek (2015-03-02 22:01) 

riek

*しましまさん

おお、どうぞどうぞ。書いている時は「私は何をこんなに必死にやっているんだろう...」と思ったりするのですが、みなさんの話を聞けるとそんな気分も吹っ飛びますので。

>悲劇がお約束のENDEAVOURとしては

ああ、だからサーズデイの悲恋だったのですね(ガッテン!)アームストロングの最後は今でも他にやりようがなかったかと思いますが、しましまさんのご意見には深くうなずきました。

私も銀婚式のパーティにアームストロングがいなくてよかったと思いましたが、サーズデイが辛かったかもしれないことには思いが至りませんでした。ふ、深い。。。ミセス・サーズデイは当然何か気づいていたと思いますが、賢く片目をつぶっていたのではないでしょうか。このエピは、殺人の動機も含めて、いろいろな愛の形(愛とは言えないものもあったけど)を対比させたエピだったような気がします。

デパートの雰囲気はとても素敵でしたね。当時の風俗を見ることができてよかったです。開店時にピアノの生演奏があるとか、とても印象に残りました。


by riek (2015-03-02 22:19) 

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