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National Theater Live『Frankenstein/フランケンシュタイン』感想。 [Benedict Cumberbatch]

イギリス本国で大変高い人気を得ていた舞台、『Frankenstein/フランケンシュタイン』。それをデジタル映像化したものがNational Theatre Liveというタイトルでイギリス他の映画館で上映されていましたが、この2月にやっと日本にも上陸しました。

【以下海外ドラマNAVIのニュースより引用】
ベネディクト・カンバーバッチ&ジョニー・リー・ミラーが2役を交互に演じる衝撃作、舞台『フランケンシュタイン』スクリーン上映決定!!
<上映日>
日程A:2月14日(金),15(土),16(日),
日程B:2月21日(金),22(土),23(日)
【配役】
A:フランケンシュタイン博士:ベネディクト・カンバーバッチ、怪物:ジョニー・リー・ミラー
B:フランケンシュタイン博士:ジョニー・リー・ミラー、怪物:ベネディクト・カンバーバッチ

【あらすじ】
本作は、ビクター・フランケンシュタイン博士と、彼が生みだした怪物を描いた物語。その醜い容姿により人々から迫害された怪物は、博士に自分を受け入れてくれる"パートナー"を創り出すよう求めるが...。

ネット上でベネディクト・カンバーバッチが演じる怪物(以下クリーチャー)がすごいと評判でしたので、日程Aを1回、日程Bを2回観ました。以下簡単ですが感想を記したいと思います。(はっきりとわかるネタバレはなし)

【全体】
この作品はメアリー・シェリーの原作小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』を舞台化したものです。私はどちらかというと事前に予習はしないほうなのですが、舞台だとどうしてもセリフ以外の情報が乏しくなるので、今回は原作を読んでのぞみました。舞台の脚本は無駄な部分はすっきりと省いているものの、おおむね原作に沿った印象。でも現代の観客にも受け入れられるよう、丁寧にアレンジがほどこされていました。

私が一番好もしいと思ったのは、作り手がクリーチャーに投げかける優しいまなざしです。原作ですと、クリーチャーはありとあらゆる人に受け入れられず、まったく救いのない状態に置かれていますが、この脚本はクリーチャーに人とのふれあいを与えています。もちろんそうすることで、その後に起こる出来事の悲劇性を高めるという効果もあるのだと思いますが、私は作り手がクリーチャーに対してシンパシーを感じ、彼を受け入れてくれる人間と出会わせたかった、いい夢を見せてやりたかったのだと思いたい。またこれにより、観客もよりクリーチャーに感情移入しやすくなったのではないかと思います。

一方フランケンシュタイン博士ですが、こちらは原作よりもさらに人情味が欠ける男性に描かれています。愛よりも科学技術を信じている様子です。そうすることで博士とクリーチャーの対比-愛を知らぬ博士と、自分を生み出した人間に愛されたかったクリーチャー-がくっきりと浮かび上がり、二人が向かい合う場面が見せ場となります。

一つ残念だったのは、博士と婚約者エリザベスの描写。エリザベスはこの脚本では原作にない役割を持つため、その分かなり重要さが増すはずなのですが、博士との関係がかなりあいまいにされたため、いろんなことがわかりにくくなったように思います。ここをもっと上手く処理できていれば、ひっかからずに前に進めてよかったのですが。

【配役:A 感想】
なんといってもジョニー・リー・ミラーが演じるクリーチャーにつきます。このクリーチャーが持つ、どこかもろくて頑是無い様に思い切り引き込まれ、150%くらいシンクロしていたかもしれません。始まって30分くらいでハンカチを手にし、終わりまでほとんど涙が止まりませんでした。もうどうしようもなくかわいそうで…私が友達になりたかった。一人で観ていたら、おいおい声を上げて泣いてましたね。クリーチャーがだんだん知識を得ていく過程が『アルジャーノンに花束を』(知的障害を持つ主人公チャーリーが実験で高いIQを得る話)のチャーリーにダブったせいもあるかもしれません。あの話にも大変弱いものですから。

ベネディクト・カンバーバッチが演じる博士、これがまた憎いほどぴったりでした。頭の出来はいいけれど傲慢で、情にも薄くて。人としては壊れた感じが素晴らしかったです。と言うわけで、この時点で私は断然A派。自分が漠然と持っていたイメージにしっくりきました。鑑賞後は激しく消耗して疲れましたけど…。

【配役B: 感想】
上に書いたとおり、ベネディクトが演じるクリーチャーがすごいという話を聞いたので、こちらは2回観ました。逆の配役というのも大変興味深く、こちらのクリーチャーもまさに熱演。肉体美、身体能力の高さ、舞台に響き渡る声など、堪能しました。ただ、自分でも不思議なのですが、ジョニー版のように激しく感情移入することはありませんでした。完全に神の視点で観ていました。うーんなんでしょうね。この作品については、ジョニーの方が自分にはぴったりなんだ、としか言いようがありません。2回目も印象はほぼ変わりませんでした。

ジョニー演じる博士、こちらはベネディクト版よりもお堅い印象。突き抜けた印象がないため、博士が持つ狂気が感じられにくく、いま一つ印象が薄く感じられました。声の抑揚などが時々クリーチャーとかぶり、一体感が感じられたので、そのあたりはよかったと思います。

というわけで私個人の感想では圧倒的にAに軍配が挙がりました。もちろんこれだけの役者さんが演じたのですから、どちらが上とか言うことではなく、単に趣味の問題だと思うのですが。ご覧になられたみなさまの感想はいかがだったでしょうか。

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コメント 4

Yurur

私も映画を見る前には、なるべく原作を読まないのですが、
今回は舞台の映像化なので、基礎知識を入れておいて良かったと思います。
メアリー・シェリーの原作は、重いですね。正直、どんよりしてしまいました(汗)

けれど、舞台の方は笑える場面も多かったし、クリーチャーのとぼけた味わいが可愛くもあり、
riekさんのおっしゃるとおり、愛ある視点で描かれているな〜という
印象を受けました。

私も配役がピッタリきてたという点では、Aが良いと思うのですが、
ベネディクトのクリーチャーが可愛くて(贔屓目か?)、Bも好きだし、
甲乙つけがたいところでしょうか。
今週も上映していたら、たぶんもう一度ずつ見に行ってたと思います。
(再上映されるようなので、嬉しいです)

今後のナショナル・シアター・ライブもすごく楽しみです。
こんな機会がある時代に生きてて良かった〜!と思います。本当に。
by Yurur (2014-02-25 23:18) 

riek

*Yururiさん

ほんとうにそうですね。私なぞは元々芝居の鑑賞数が少ないせいか、演劇を理解する回路がないせいか、原作ものは予習をしないとついていけないような気がして…読んでいって正解でした。でも重かったです。これだけ救いのない話も久々に読みました。

笑えるシーンは楽しかったですね。要所要所ではさまれていたので、かなり計算されていると思います(が、しかしそうとは気づかせないほどに)。あの原作とは違うラストも、愛の表れではないかと思いました。

ああ、確かにかわいいかも>ベネクリーチャー 絶賛されている方も多いようなので、私も輪に加われたらなーと思いつつ、しかしジョニークリーチャーは動かしがたいです。再上映に行くなら、迷わずA版と決めています。

ナショナルシアターライブは本当に楽しみですね。願わくばNT50も観たいなあ。芝居を観たいと思ってもそうそう海外に飛べるわけではないですから、ありがたい話だと思います。あまり興味を惹かれなさそうな作品でも、今後のためにできるだけ足を運ぶつもりです。

by riek (2014-02-26 21:47) 

hedgehog

riekさん

感情移入を誘うという意味ではJLMクリーチャーがダントツだと私も思います。何せ対峙するBC博士が本格的な「ひとでなし」だから、ますます可哀想に思えてなりません。

BCクリーチャーも可哀想だはと思うけど、「ひとじゃない」感が強くて怖いほうが先かなあ。おまけに対峙するJLM博士は、riekさんのおっしゃる通り、イマイチ影が薄いから、余計にクリーチャーの怖さが強調されてしまうような気がしました。

私はどちらのパターンも1回ずつしか観られなかったので、再上映の際はチケットが取れれば両方とももう一回観るつもりでいます。日本橋以外でも上映してくれるといいのですが。
by hedgehog (2014-02-26 22:02) 

riek

*hedgehogさん

そうなんです!もう感情移入が半端なくて、大変でした。BC博士、ひどかったですよねぇ、もちろんほめ言葉ですけど(笑)BCのクリーチャーは、そうか、「ひとじゃない」感じか。ひとじゃない演技があまりにすごかったので、私なんかはかえって入り込めなかったのかなぁ。しかしJLMクリーチャーで胸がいっぱいだったからのような気もします。

ああ、再上映で今決まっているのは日本橋なんですね!映画が始まる前に宣伝していたので、気にはなっていました。オープンしたての映画館で観られるのはうれしいですね。もちろん他のところでも決まりますように。

by riek (2014-02-27 22:22) 

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