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John Finnemoreのブログ翻訳。-S4Ep4 Wokingham- [Cabin Pressure (Series4)]

まずはお知らせです。ジョンのブログ翻訳記事(Vaduz)の中に未発表シーンがあるのですが、最後のアーサーのセリフとダグラスのセリフが欠けていたため、補足しました。抜けが多くて申し訳ありません…

さて。ジョンのブログ、Wokinghamの記事の翻訳が形になりましたので、アップします。元記事はこちら。以下ネタバレ含みますのでご注意ください。誤訳のご指摘、ご意見等あればコメント欄までよろしくお願いします。

今回の話は扱いが難しかった。「マーティンの家族」を作り上げるにあたり、一つ気をつけたことは、彼の家族の誰をも疎外しない、敵にしないということだった。Helsinkiで登場したキャロリンの女兄弟や、St Petersburgに出てきたアーサーの父親は、作品の中の意地悪な部分になったよね。だからクルーのうちの3人がひどい家族を持っているっていうのは、緊張感が強くなりすぎると思ったんだ。でも、やはり何かしらの緊張感とぶつかり合いは必要で、そうでなければ話が成立しない。その結果、純粋で、才長けていて、それでいて他の人に迷惑をかけないよう、見ているこちらがいらだたしくなるほどがんばろうとする、ウェンディというキャラクターが生まれた。サイモンも同様だ。彼は厚かましくて無神経だけど、マーティンのことが大好きで、彼に会えるのを楽しみにしているし、彼のことなら簡単にほめられるんだよ。彼の場合、上から目線になっちゃうんだけど。僕たちだって、自分の家族に会えば、昔に戻ってしまう。サイモンも一緒で、彼にとってマーティンはいくつになっても9歳の弟なんだ。まぁ、多少なりとも勝手気ままに書くことを制限される時こそ、素晴らしいものが生まれてくる-例えばアーサーとウェンディの相性は抜群だったし、最後の方でマーティンがサイモンに強気にでる可能性も少しだけ示すことができた。

で、後はウェンディ役にプルネラ・スケールをキャスティングするだけだった!それが実現しただなんて、ただただ驚くほかはないよ。毎回ステファニ・コールと一緒に演じる時に、コメディに心のすべてを捧げるのと同じような気持ちで、僕は素晴らしいプルネラ・スケールと共演する2つの難しいシーンを書いた!(何のことかわからないなら、君は間違いなくイギリス出身じゃないね。別にいいんだよ、君が悪いわけじゃない、お気の毒とは思うけど。)

他にあるかな?ああそうだ、このエピソードには僕が時々言ってる要素が入っている-ラジオで視覚に訴えるジョークをやるのは意外に簡単だっていうことなんだけど、これがその好例だよ。いつも僕が例に挙げるのは映像にしにくいDouzのラストシーンだけど、今回のはもう少し軽いバージョンだ。医者が病院でマーティンとケイトリンに会った時、彼はマーティンにパーティの邪魔をしてすまなかったと言うよね。それに対してマーティンは一瞬戸惑ったあと、「あ…いえ、これ僕たちの仕事なんです」と言う。ここでラジオの聴取者は、内容を理解するために一度考える必要がある。そしてマーティンはパイロットで、ケイトリンは交通係で、そしてウェンディが子供たちに、制服を着たまま仕事からまっすぐ自分のところに来た、と言って怒ってたってことを思い出すんだ。医者が目にした光景が、一瞬にして聴取者にそのことを気付かせる。また聴取者が思い出すという機能だけど、聴取者はセリフを理解するために、自分たちが耳で聞いたものを思い返す。テレビでは、僕たちはユニフォームを目にするよね。そこでこのセリフが理解できても、さほど面白いとは感じない。なぜかというと、視聴者はジョークを理解するのになにもする必要がないからさ- 面白いことに、頭の中でちょっと考えると、ジョークってさらに面白くなるんだよね。

解説と質疑応答

「ちょっと待って…ダグラス、1シラブルゲームで負けたでしょ?機内アナウンスの時」
いいや。

「負けたよ!だって'hour'って言ったもの、'hour’は2シラ-」
負けてない。絶対に負けてない。何でそんなバカらしい嘘つくの?

「負けたってば!彼は間違いなく'hour'って言ってるよ!もう一度聞き返してみて、彼は-」
その必要はないよ。彼が'hour'なんて言うわけない。もし言ってたとしても、いや言ってないんだけど、キャロリンは気付かなかったんだから、負けてないよ。とにかく僕は、君にはわからない理由で、とっても慎重に説明したんだよ。はい次。

・なぜCaitlynはリムリックではKate-lyn って言ってるのに、ここではCat-lynなの?
彼女は ずっと'Kate-lyn'だったんだけど、彼女が17歳の時自分で'Cat-lyn'の発音の方が良いって宣言したんだ。家族はみんなそのことを覚える努力をしてるんだけど、時々忘れてしまう。特に彼女がいないときにね。

(ジャスティンがベネディクトを持ち上げている写真について)

そうだねぇ…放送されるのはラジオだから、別にジャスティンは「たかい、たか~い!」をやる時にベネディクトを持ち上げる必要はなかったよね。でも…やったんだよなぁ。僕が脚本を持っててあげたんだ。プルネラ・スケールの隣に立ってね。うん、そうだった。

【riekのコメント】訳しているといつも思うのですが、ジョンのバランス感覚は常に脚本に反映されているんですね。ご本人の中に絶対ブレない「シットコムの指針」のようなものがあるんだろうな、と感じます。後、「視覚に訴えるジョークの話」はすごい。あの短い時間の中に、これだけのロジックが秘められているとは。ラジオコメディの奥深さをまた一つ知りました。

さて、ジョンのブログですが、S4の分はこれで一区切りとなります。S3もあるので、追って訳していくつもりですが、いったん本編のスクリプト翻訳(解説つき)に戻ります。Abu Dahbiが中途半端に終わっているので、とりあえずそれにめどをつけなくては…スクリプト翻訳は全訳ではありませんが、エピソードがより楽しめるような解説をつけていきたいと思います。
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まゆみ

riekさん、丁寧な翻訳、素晴らしいです。
私の今の生活は、英語で話し、読み、考えるというのがほとんどなので、日本語がすっかり錆び付いてしまい、翻訳は私にとってむずかしい作業になってしまいました。ですから、こなれた翻訳をなさる方を尊敬のまなざしで見てしまいます。

CPをきっかけに、私はラジオ・ドラマにハマってしまったのですが、その醍醐味は聴取者に想像力が要求される事だと思うのです。「視覚に訴えるジョーク」もまさにそのひとつで、上手く組み立てられたジョークに笑えた時、(適当な言葉が見つからないのですが)自分の中で知的な満足感を覚えるのですよ。

コメディではありませんが、今日から始まった、Neil Gaimanの"Neverwhere"(BBC Radio)も、想像力を駆使して聴きました。冒頭からいきなり、Anthony Headの登場でしたよ〜。

by まゆみ (2013-03-17 21:52) 

riek

*まゆみさん

過分なお褒めの言葉をいただき、恐縮です。英文と和文とどちらのリズムを重視するかとか、元の文章の意味をどの程度まで意訳していいのかとか、やればやるほど難しさを感じます。後、つい書き手ではなく自分の思い入れが入ってしまう場合があるので、それは気をつけないといけないです(たいてい後で手直しするのはその部分です)。でも、これは!という訳が出来たときはうれしいですし、少しでもジョンの意図が伝わるような文章が書けているとしたら、やってよかったと思います。

「視覚に訴えるジョーク」、振り返れば確かに書かれたとおりのことをやっているのですが、聞いている時は無意識なので、改めて文章で表現されて驚いてしまいました。最初は慣れなくても、何度も何度も聞いているうちに想像力が豊かになり、楽しめるようになるんだろうと思います。

ああ、Neverwhere、今日からですか。もうすべてを追っていると追いつかないので、選択しないといけないと思うのですが、一応聞いてみます。Anthony Headが出ているなら聞かないとですね(^^)
by riek (2013-03-17 23:36) 

nyajara

riekさん、みなさん こんにちは♪
nyajaraです。

Johnのこのエントリーは以前読んでましたが、riekさんの訳を読んで、こんないい事が書いてあったんだと感動しました!…いかにいい加減に読み流しているのか…(ごめん John)
それからriekさんの訳が、こなれているだけでなくJohnの文章の温かみにもあふれているので、読み落としている箇所だけでなく言わんとしている事が(初めて読む事のように)すんなりと受け取れます。ありがとうございます♪

Johnがラジオの醍醐味は映像にすると莫大な費用がかかる事も可能だとDouzの「水着姿のクリケットチームが機体を持ち上げつ運ぶ」を例にしてましたが、→このシーンは視覚化的にも真骨頂ですね♪ 私はキャロリンがダグラスに「機内に戻って服を着て 何か考えて」という所も大好きです。
…ダグラスも裸(多分半裸だと思うけど)だったんだ…と後から分かるギャグ♪(笑)
by nyajara (2013-03-18 17:27) 

riek

*nyanjaraさん

こちらこそ過分なお言葉をありがとうございます。ジョンはブログで本当にいいこと書いてますので、時間があったらじっくり読んでみてください。私の拙訳でお役に立てているなら本当に何よりです。元々ストーリーの作り方とか表現方法とかに興味があるので、書いてある内容が私好みだからがんばって訳せる、というのもあるかもしれません。

Douzのあのシーン、最高ですよね。あのキャロリンのセリフ、私も後で「あっ、そうだったのか!」と思い、ダグラスの水着姿をうっかり思い浮かべて「きゃー」となった記憶が…だってあの時しんみりとした会話してましたよね?映像にしたら、笑うしかないような気がします(笑)
by riek (2013-03-19 00:15) 

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